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  アートで街を再生 横浜 黄金町  
     
   「アート」を媒介とした街づくりが、横浜市中区の黄金町地区で進んでいる。京急線の高架下や沿線に軒を連ねていた約260店もの違法風俗店は、「バイバイ作戦」と呼ぶ県警の集中取り締まりで20店を切るまでに激減。空き店舗や跡地には、横浜市の斡旋でギャラリーやアトリエが入居し、アーティストたちが滞在して制作に励む。今年1月には、バイバイ作戦のスタート10周年を祝って、住民組織が主催する記念式典も行われた。 大岡川の川岸に位置する黄金町は、水運が盛んだった戦前には問屋街として栄えたが、横浜人空襲であらかた焼失。京急日ノ出町駅から黄金町駅までの約500mの沿線には、戦後の復興とともに歓楽街が形成され、黒滓明監督の映画「天国と地獄」の舞台にもなった。売春を目的とした「ちょんの問」と呼ばれる違法風俗店は、最盛期には257店(県警調べ)を数え、年間5億円もの用心棒代が暴力団に渡っていたといわれる。 住民らの要望を受けて県警は2005年1月、京急の高架下の中心部に指揮本部を設置してバイバイ作戦を開始。売春防止法や人管難民法に基づく集中取り締まりを継続し、違法風俗店を廃業に追い込んだ。また、横浜市は08年から空き店舗や跡地を借り上げ、アートを通して街を再生させる試みをスタートさせた。現在までに約180店が廃業し、ギャラリーやアトリエなど「文化・芸術の創造拠点」に生まれ変わっている。 同市は、京急の高架下を借りてガラス張りのスタジオもオープン。 NPO法人黄金町エリアマネジメントセンターに委託し、アートイベント「黄金町バザール」も毎年開催している。7回目の昨年は、現代美術の国際展「ヨコハマトリエンナーレ2014」と、日中韓3力国で開いた文化行事「東アジア文化都市2014横浜」と連携して、例年より規模を拡大。「仮想のコミュニティー・アジア」をテーマに、国内外から38組のアーティストが参加した。 このような硬軟両様、官民一体の街再生の試みは、県内にとどまらず全国からも注目されている。一方ではここ2、3年、空き店舗や跡地を犯罪目的のダミー会社の所在地として登記したり、生活保護費をだまし取る狙いから違法な簡易宿泊所に転用したりするなど、新手の犯罪も発生。逆行を防ぐため、県警は京急の高架下に指揮本部を継続設置し、同市も店舗や土地の所有者らと借り上げ交渉を継続している。 そんな中で、バイバイ作戦のスタート10周年を祝う記念式典が今年1月、同市西区の市立東小学校で聞かれた。主催した初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会は、県警生活安全部長や副市長を招き、「愛する街を絶対に10年前に戻さない」と決意表明。防犯パトロールを行い、ギャラリーやアトリエに再生された「成果」をあらためて確認し、伊勢佐本署黄金町交番前で「再び商いの成り立つ、にぎわいのある街の復活を目指す」と宣言した。 並行して京急の高架下のスタジオでは、1月から3期に分けて黄金町ゆかりのアーティストによる展覧会「黄金町通路」を開催。第1期は「再訪」と題して、白身のドキュメンタリー映画が公開された加藤翼さん、ヨコハマトリエンナーレにも招待された和田昌宏さんらの現代アートを展示。「記録」と題した第2期は、黄金町にギャラリーを構える倉谷拓朴さんと、昨年短期滞在したフィリピン出身のポール・モンドックさんの二人による写真展を開いた。 3月7日から始まった第3期のテーマは「成果」。展覧会を主催する黄金町エリアマネジメントセンターによると、アーティストにとって黄金町での体験は単に作品を発表することにとどまらず、さらなる実験・新たな交流の場となっているという。それを踏まえて、タイトルの「黄金町通路」には、アーティストにとっての「通過点」、多様な人々が行き交う「通路」という意味を込め、アートを媒介とした街づくりについてあらためて考える機会にしたいとしている。